抗生物質が効かなくなる
薬剤耐性を獲得した微生物は、細菌ならば「薬剤耐性菌」と呼び、ウイルスならば「薬剤耐性ウイルス」と言います。
細菌やウイルスは、増殖する過程で遺伝子に変異が起こります。ウイルスは遺伝情報の伝達にRNAもしくはDNAのどちらかのみ使います。DNAウイルスなら複製エラーが生じた場合は修復する機能がありますが、RNAウイルスは修復機能がないので、遺伝子変異が起こりやすいです。そうして細菌やウイルスは人間の何千倍というスピードで増殖し、世代交代を行ないます。その過程において抗生物質に対しての耐性を持つのです。
耐性菌や耐性ウイルスは、抗生物質を使用すると、その抗生物質に対する耐性をいずれ持つようになります。これは使用頻度が多いほど早く耐性を持ちますが、頻度が低くても時間が経てば耐性を持つかもしれません。
耐性菌により治療が難しくなる
もしもその抗生物質に対する耐性を持てば、他の効果のある抗生物質を使って治療します。しかし現在開発されている全ての抗生物質に耐性をもつ菌やウイルスが誕生すれば、新しい抗生物質を開発しないと、治療がほぼ不可能となってしまうのです。
重要なことは、無闇に抗生物質を使わない、抗生物質を使わないで済むなら他の方法を使用して治療する、基礎体力を付けて一定の抵抗力を持つようにするなどすべきです。
耐性をもつ仕組み
1つめは、薬剤の不活性化です。これは、細菌自身が抗生物質を無効化する酵素を作ってしまいます。抗生物質に対する耐性獲得のメカニズムでよく見られる耐性機構です。
2つめは、薬剤作用点の変異です。薬は、鍵と鍵穴の関係とよく言われ、細菌やウイルスの鍵穴に合う鍵の薬でないと効果がありません。抗生物質が作用していた菌の部位の構造が変化すると、鍵と鍵穴のように合わなくなり、薬が作用できなくなります。この機構はウイルスで多く見られる耐性機構です。
3つめは、抗生物質に対する耐性機構として、薬を排出するポンプ機能です。ポンプによって多くの抗生物質を菌の体外へ排出する機能があるので、ポンプ機能を持つ細菌では、多くの抗生物質に耐性を持つのです。
耐性菌は抗生物質を無効化する遺伝子を持ちます。この遺伝子はやっかいなことに、細菌同士で伝わります。1つでも耐性菌が現われると、その後他の菌にも遺伝し耐性菌が増える確率は高くなってしまいます。抗生物質の乱用は耐性菌を発生させるだけでなく、耐性菌の遺伝子が他の細菌にも伝わり、爆発的に耐性菌を増やすことにも注意しなければなりません。